そもそも自宅に金庫がある家が珍しいのですが、大昔の日本にだって、蔵(くら)があったわけで、鍵の代わりになる人間、つまり金庫番でいう役職だってあったのですから、金庫自体はそんなに馴染みが薄いものでもないのでしょう。
実は高校時代の友人に、資産家の息子さんがいます。この友人の自宅と言うのがいわゆる「お屋敷」というやつで、高校時代は「お城」と呼ばれていて、その友人のあだ名にいたっては帝(みかど)でした。
さてこの友人の「お屋敷」に久しぶりに遊びにいったとき、その友人の部屋に金庫があるのを見つけたのです。なぜお家の金庫があえて自分の部屋にあるのかと尋ねると、その金庫はその友人専用のものだということでした。つまり父親には父親用に、母親には母親用に、それぞれが金庫を保有しているというのです。金持ちの考えることはよくわからないなあというのが率直な感想だったのですが、自分の私物、特にプライバシーに関するものを保管する場合、共同の金庫では何かと都合が悪いということらしいのです。
実は友人の「お屋敷」には、かなりいろいろな人が出入りしています。実は自宅が職場の一部、事務所のような役割を果たしているところがあり、貴重品や機密保持に関わるもの、プライバシーに関わるものを、一般の家庭のようにそこらへんに置いておくことが出来ない状況にあるというのです。たしかに家の扉と言う扉には鍵がかけられるようになっており、たくさんある部屋もそれぞれ独立した個室としてセキュリティー機能をもっているようだったので、たくさんの個室が集まってひとつの「お屋敷」を形成しているということなのかもしれません。
この友人の状況はかなり特殊なものでしたが、もしも金庫を所有するのであれば、これはやはり個人ひとりひとりが持つことが理想でしょう。もっとも防犯機能が高い金庫は大型であり、家族全員が所有するにはそれこそ「お屋敷」が必要かもしれません。