起業して一番始めにしたことは金庫の購入

私が保育士として3年務めた保育園は、園長先生をはじめとてもリスペクトできる教育概念を持った先生ばかりだったので、私にとって大きな実りとなった。だけど実際に自分に子供が産まれ、また職場復帰しようと思ったとき、紹介された保育園は私の望む理念とは程遠い、感じの悪い園だったので預けるのをやめてしまった。結局仕事は諦め、自分の手で納得できる育児をしようと決めたのだった。

だけど子供とみっちり24時間付き合うという生活、子供慣れしている私ならきっと大丈夫だと思っていたけれど、実際は保育と育児はまるで違うものだということを痛感した。保育には終わりがあるし私の代わりになれる先生もいるけれど、育児に終わりはないし母親というのは誰も変わることのできないポジションである。友達と発散しようにも、子供がいると落ち着いてランチもできないのでかえってストレスが溜まってしまう。そんなとき、安心して預けられる場所があればいいのに…そのとき「理想の保育場所」というのを強く意識し、自分の手でそれを作ろうという意欲が湧いて来たのだった。

同じく幼稚園の先生だったママ友と一緒に、我が家の開いている部屋で託児所を開くことになった。そして企業して一番初めにしたこと。それは金庫の購入だ。理想はあっても私はあくまで社長であり、ママ友にお給料だってちゃんと支払わなくてはならない。小人数制だとか、託児部屋にカメラを設置してアプリで部屋の様子がわかるようにするとか、1時間ごとの子どもの様子を記録するとか、どんなに至れり尽くせりの保育で保護者を安心させようとしても、いつ潰れるかわからない不安定な経営では意味がない。金庫を購入したのは、私は保育の理想を追う保育者であるとともに、経営者であるということを自分自身に知らしめるためでもあったのだ。

来年の四月からオープンする私達の託児所の準備に追われながらも、充実した毎日を過ごしている。